横浜美術短期大学(現・横浜美術大学)卒業生6人が毎年開催している『いろ』をテーマにした絵画作品展【pick up color展】は、今年の1月で第9回目を迎えました。
2008年に「サップグリーン」から始まった色のバトンは、「きいろ」「ももいろ」「ムラサキ」「しろいろ」「そらいろ」と1年ずつ変化してきました。
植物の成長の流れをテーマ色の変化になぞらえており、若葉であった私達が成長し、つぼみとなって花を咲かせ、実を結び、綿毛となり大空へと飛び立ったというイメージです。
2014年は過去の6色をひとり1色ずつテーマとした「にじいろ展」、2015年は綿毛が飛び立った空の先にある太陽の色をテーマに「あか展」を開催。そして2016年は、浮遊していた綿毛が新たな芽を出すために着地した地面の色として「土いろ展」を開催しました。
この度、母校の大学ギャラリーにおいて、【pick up color展】のあゆみを皆様と共に振り返り、作家6人それぞれの『いろ』をお楽しみいただければ幸いです。
出展作家
井上宇史、田島愛及、出羽未典、出羽由紘、長尾友香里、米倉寿音
「PICK UP COLORS」展によせて
横浜美術大学の前身である横浜美術短期大学絵画コースを卒業し、ある者は社会人となり、またある者は専攻科へ進学したのち意気投合し、グループを結成して作品を発表しつづけてきた pick up color artists に、大学ギャラリーでの発表を勧めたのは2年前のことでした。
メンバー6人は、在学中から意欲的な制作で注目されていましたが、卒業後は幅広く発表の場を求め、旺盛に創作活動を続けています。
しかしいつの時代もそうであるように、生活の糧を得ながらアーティストとして制作に打込むことに、社会は寛容ではありません。
そのことを彼らは身をもって経験して来たはずですが、怯むことを知らず、近年ますます作品に根の張った主張を見ることができます。
pick up color artists は、草木の成長になぞらえた『いろ』の変化を各自がテーマに取り込んで、毎年制作発表することに由来しているそうですが、回を重ねるごとに彼ら自身も成長を続けています。
芽を出し「サップグリーン」、つぼみとなり「きいろ」、「ももいろ」の花を咲かせ、「ムラサキ」の実をつけて、やがて「しろいろ」の綿毛へと変化した後は、広大な「そらいろ」へ飛び出す。さらに過去の6色をひとり1色ずつテーマとした「にじいろ」につづき、綿毛が飛ぶ空にある明るい太陽をイメージした「あか」へ。そして今年2016年は、浮遊していた綿毛が新たな芽を出すために着地した地面の「土いろ」をテーマに発表しました。
日常のふとした感情や情景を、抽象的に表現して描く 井上宇史
自然や風景取材から、包み込まれる様な眩い光を描く 田島愛及
食べものや連続模様の中に、そっと人物を潜ませ描く 出羽未典
ものの形に焦点を置いて、遊び心のある輪郭線で描く 出羽由紘
クローズアップした果物等を、瑞々しい透明感で描く 長尾友香里
身近な人間や動物の親密感に、妄想を混ぜあわせ描く 米倉寿音
本展覧会によって、この若きアーティストたちが皆様の共感を得るとともに、メンバーそれぞれが、さらなる進展の機会とすることを願って止みません。
横浜美術大学教授 沓間宏